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「3DCG」とはコンピューターグラフィクスのひとつで、3次元の立体空間で描かれるものです。そんな3DCGの活躍の場が、多岐に広がってきています。この記事では3DCGについて、作り方や使われるソフトの選び方、自分で勉強する方法などについてご紹介します。
3DCGとは、3次元デジタルグラフィクスの略です。コンピュータを使って画像を生成するコンピュータグラフィクスの一種です。これまで一般的だったのが「縦」と「横」での2次元でのコンピュータグラフィクスですが、これに対して3DCGは「縦」「横」「奥行き」の3つの方向が存在する空間で作られます。2次元では表面的だった画像が、3DCGでは立体的になり、よりリアリティあふれる空間で動きを加えます。
3DCGは映画、アニメーション、ゲーム、建築、製品デザインなどのさまざまな業界で活用されており、今では欠かせない技術のひとつです。ハードウェアやソフトウェアの発展で、さらに高度な表現ができるようになっています。
コンピュータの画面は表面的ですが、なぜ3DCGは立体的に見えるのでしょうか?それは、コンピュータで作られた3次元空間にある立体的なモノを、平面状の情報に変換しているからです。「縦」「横」「奥行き」の3つの座標をもつ3次元空間にあるモノを、2次元のスクリーン上に透視投影して、それをコンピュータの演算によって画像として表現しているのです。3次元空間にあるモノを移動させたり変形させたりすると、コンピュータがそれを再び演算して、別の画像を生成します。このようにコンピュータの演算で画像を生成するプロセスを「レンダリング」といいます。
3DCGはさまざまな業界で活用されているとご紹介しました。具体的にどんな業界や場面で使われているのでしょうか。
現在、3DCGの技術が最も広く活用されているのはゲーム制作です。いまや3DCGを活用したゲームは数多く存在し、欠かせない技術となっています。3DCGを活用することで、リアリティあふれるゲームとなり、臨場感あふれるプレイが可能になったり、キャラクターの表現や独特の世界観が作られたりしています。3DCGが活用されたゲームは、そうではないゲームに比べて、よりリアルでプレイヤーが没頭して楽しめるという特徴があります。
アニメ業界でも3DCGの技術は重要で、多くの作品で活用されています。今から30~40年前からCGが使われているアニメ業界ですが、今では3DCGがメインで使われるほど大切な技術となっています。よりリアル感のあるなめらかな動きが可能となり、多くのシーンで3DCGが使われています。またすべてのシーンを3DCGで作るフル3DCGアニメーション作品も登場するなど、ますます3DCGの技術が一般化しています。アニメ―ション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』をはじめ、3DCG技術を広く使ったアニメーション映画も生まれています。
映画業界でも、3DCGの技術は広く使われています。3DCGが活用されるのは、SFやファンタジーなどの空想上での世界や、現実では表現しづらいシーンなどです。大がかりなセットを組んだり、スタジオを用意したりということがなくなるため、3DCGの技術を活用して撮影のコスト削減につなげるという面でもよく利用されています。3DCGが使われた映画として挙げられるのは『アバター』『ADAM』などがあります。
映画と同じように、3DCG技術が多く使われているのがテレビ業界です。映画の場合と同じように、本来なら大規模なセットを組んで撮影するところを、3DCG技術を使うことでコストをかけずにリアリティあふれるシーンを再現できます。実際の作り方としては、複数台のカメラやドローンで撮影を行い、そのデータをAIが分析して3DCGとして立体的な映像に表現しています。
建物の設計図を作ったとき、それが実際にどんな建物になるのかコンピュータ上でシミュレーションする技術として、3DCGが使われています。建築業界のプロなら、平面で作られた設計図を見てどんな建物になるかイメージできるかもしれませんが、そうではない方には難しいものです。そこで3DCGの技術を活用して、設計の計画をリアリティあふれる完成予想図として事前に見ることができるのです。建築などの専門知識がない人でも、どんな建物ができあがるのか事前に確認できることから、建築計画を提案するコンペなどでは3DCGを活用した完成予想図が使われています。
プロダクトデザインのシーンでも、3DCG技術は広く使われています。靴、洋服、インテリア製品など、さまざまな商品をデザインする場面で、実際の商品を製造する前に、仕上がりのイメージを3DCGで作っています。3DCGで仕上がりイメージを作れば、360度のあらゆる角度からどんな風に見えるかわかり、カラーバリエーションを作ったり、商品の一部を変更したりするときも便利です。昔なら手書きのイラストで作られていたところを、現在はコンピュータ上ですぐに作ることができ、時間を短縮しながらよりリアルでわかりやすい表現が可能になっています。
仮想空間の中で、実際は体験していないのに、あたかも自分がそこに行き自ら体験したような疑似体験が可能になるのがVRアプリやARアプリです。そんな体験型のアプリでは、3DCGの技術を使った仮想空間が作られています。3次元のリアルな世界観と、キャラクターの表現が可能で、仮想空間に来たユーザーはその世界に没入できます。
具体的に3DCGをどんな風に作っていくのか、その方法を順に見ていきましょう。
3DCGを作る最初のステップは「モデリング」です。モデリングとは、3次元の空間で作りたいモノの形状を作ることをいいます。3DCGで何かを作るときは、必ずこのステップから始まります。モデリングにはいくつかの手法がありますが、一番主流なのがポリゴンモデリングという方法です。点、線、面でモノの立体を構成していく方法で、最も自由度が高く、日本で多く行われています。そのほかにはスカルプモデリング、曲面モデリングなどがあり、表現したい目的や技術者のスキルなどによってさまざまな手法がとられています。
テクスチャとはモノの表面の手触りや質感のことで、3DCGのオブジェクトに画像を貼り付けて、そのモノの表面の手触りや質感を表現する工程です。マテリアルもオブジェクトの質感を設定する工程で、金属のように反射する固い物質に見せたいのか、それともガラスのように透過する物質にしたいのかなど、そのモノの質感を決める工程です。テクスチャやマテリアルは、3次元空間にある無機質なモノにリアル感を持たせていくための大切なプロセスです。よりリアリティあるモノにするには、リアルなテクスチャやマテリアルが必要になります。
リギングとは、モデリングしたモノにアニメーションを付けるための設定を行うプロセスのことです。動かない設定のモノであれば、モデリングしてテクスチャやマテリアルを設定したら、それで完成となります。しかし動きをつけるものであれば、リギングを行う工程に進みます。例えば、キャラクターならキャラクターの中に骨(リグ)を埋め込み、肘やひざなどの関節部分を曲がるように設定していきます。つまり動きをつけたいモノやキャラクターにリギングを行って、初めて動き出すようになるのです。リギングがうまくいかないと、キャラクターが動かなかったり、おかしな動きをしてしまったりします。
3DCGでは、3次元の空間で作られたデータのファイルを2次元のコンピュータの画面上に表現しなければなりません。そこで画像、映像、音声などを表示させるために、コンピュータ上で処理や演算をするプロセスをレンダリングといいます。コンピュータプログラムを用いて、テクスチャ、マテリアル、ライティングなどの計算を行い、最終イメージの出力のために計算を行っていくのです。
レンダリングの工程は、現実の世界でカメラを撮影するプロセスと似ています。被写体を決めて、構図やライティングを考慮しながら撮影するというシーンを想像するとわかりやすいでしょう。
レンダリングの最後に、煙、炎などの特殊効果を付け足すことで、3DCGが完成します。
3DCGの制作ではソフトが欠かせません。ここでは、どうやって制作ソフトを選べばいいかご紹介します。基本的には、無料のソフトと有料のソフトの2つに分けられます。無料のソフトは仕える機能が制限されていることが多いのですが、初心者や3DCGの学習用に使うなら、まずは無料ソフトで始めてみるのがおすすめです。
3DCGをどんな目的で使うかによって、ソフトを選ぶ方法があります。もし3DCG制作の基礎から学んでいきたいのなら、モデリングの基礎やテクスチャなどさまざまな機能が網羅されている総合型のソフトがいいでしょう。総合型ソフトは専門学校などでも使われているケースが多く、入学前にある程度の3DCGを学んだり、学校に通いながら自宅で3DCG制作に挑戦したりするときにも便利です。また3Dアニメーションを作りたいときと、モデリングしてアバターを使ってVRChatに使いたいときで、おすすめのソフトは変わります。
数ある3DCGのソフトには、それぞれで特徴や強みが異なります。例えばモデリング機能に優れたソフト、アニメーションの動きが強化されたソフトなど、実にさまざまなソフトがあります。そんな機能について着目して、ソフトを選んでもいいでしょう。自分が得意な分野や苦手な分野の機能に特化したソフトをチョイスすれば、そのスキルをレベルアップさせることもできるでしょう。特化型ソフトを選べば、総合型ソフトにはないより専門性の高いスキルも学べます。
3DCG制作ソフトの多くは海外製のため、基本的な機能やサービスの情報は英語で表示されます。すでにそのソフトを十分使い慣れているのならいいですが、初めての利用や、不慣れなソフトであるなら、日本語でさまざまな情報を入手できた方がいいでしょう。そこで、日本でよく使われているソフトを選ぶという方法があります。日本に多くのユーザーがいれば、日本語で解説した動画やサイトが数多くあり、それらを参考にしながら使えます。英語が苦手な方ならとくに、そんな視点で選んでみてもいいでしょう。
では、3DCG制作でおすすめのソフトをご紹介します。
「Blender」は、3DCGの総合型ソフトです。オープンソースのソフトのため、すべての機能を無料で使えます。世界各国でローカライズされていて、日本語での利用もできて便利です。無料ソフトと聞くと機能に劣る点があると思われるかもしれませんが、Blenderはモデリングからレンダリングまで、すべての3DCGの工程を完結できます。無料ですべての機能を使えて、日本語での情報収集も簡単なことから、3DCGを始めたい人にもおすすめです。https://www.blender.org/download/
「Maya」は、Autodesk社の3DCアニメーション制作ソフトです。3Dアニメーション、モデリング、シミュレーション、レンダリングまで可能で、3DCG制作における全ての工程を完結できます。映画並みのエフェクトを作成できることも特徴のひとつで、日本や海外の幅広い現場で使われています。Windows、Mac、Linuxに対応しており、さまざまなOSで利用できます。
https://www.autodesk.co.jp/products/maya/overview
「3ds Max」は、「Maya」と同じくAutodesk社の3DCG制作ソフトです。ゲーム、映画、モーショングラフィックスなど、さまざまな現場で使われています。アニメ『鬼滅の刃』の制作で使われたことでも話題になりました。「3ds Max」の特徴は、優れたプラグインが豊富にあることです。Max8以降のバージョンでは、豊富なプラグインがすでに標準で組み込まれており、それ以外に好みで好きなプラグインを入れて使用できます。「Maya」よりもアニメーション系のプラグインが豊富で、CGアニメーションではよく使われているほか、CADなど建築業界でもメジャーになってきています。 https://www.autodesk.co.jp/products/3ds-max/overview
同じくAutodesk社が提供する無料ソフトの「Tinkercad」は、3Dモデリングのソフトです。直感的でわかりやすいインターフェースのため、初心者でも使いやすく、3Dモデリングの感覚をつかむ際におすすめです。しかもウェブブラウザ上で動作するため、ソフトをダウンロードしてインストールする必要がなく、OSなどの環境設定を気にする必要もありません。画面が英語で表示されることがありますが、表記を変更すれば日本語で表示されます。
https://www.tinkercad.com/
「RenderMan」は、ディズニー映画でおなじみのピクサー・アニメーション・スタジオが開発したソフトです。『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』シリーズを制作してきたピクサーは、高いCGアニメーション技術などが評価されている会社です。そんな同社が手がけたレンダリング専用の特化型ソフトで、商用でなければ無料でダウンロードして使えます。「Blender」や「Maya」などに対応しているため、アドオンやプラグインで連携させて、モデリングさせた素材をレンダリングできます。ディズニー映画で利用されている技術を体験できます。
https://renderman.pixar.com/
3DCGについて勉強したい場合、どんな方法があるのでしょうか?
最も気軽に始められる勉強方法は、独学で行うものです。市販されている書籍や、インターネット上にある動画サイト、チュートリアル動画などを見てスタートできます。まずは3DCGに関する専門用語などを調べたり、自分でできることから始めてみてもいいでしょう。無料ソフトをダウンロードして、実際に自分で手を動かしながらトライしていくとわかりやすいはずです。不明な点はインターネットで情報を検索したり、フォーラム等で聞いてみたりすることもできます。
最近では、オンラインスクールや通信教育で3DCGについて学ぶこともできるようになりました。独学に比べると費用はかかりますが、体系的に3DCGについて学べます。さらに自分の作品を添削してもらえるなど、より効率的に学びやすい環境といえるでしょう。学校に通う場合に比べて、移動時間も交通費もかからず、自宅で受講できるところが魅力的です。
最後は、専門学校に通って3DCGを学ぶ方法です。独学やオンラインスクール・通信教育に比べると、学校に通う手間や費用がかかりますが、その分だけ本気で学びたい人が集まっており、モチベーションの高い仲間とともに3DCGについて学べます。プロフェッショナルな人材が講師をしている学校なら、3DCGが使われている現場で、どんなスキルが求められているのかを把握して、より実践的な指導を受けられるでしょう。卒業後の進路のサポートがあれば、学校で学んだことを自分の職業として活かしていく道が開きやすくなります。
「日本アニメ・マンガ専門学校」は、3DCGクリエーターをはじめ、3DCGについて学べる専門学校です。基本的な知識がない方でも、パソコンの電源の入れ方から指導しているため心配はいりません。綿密に作られたカリキュラムで、初心者からでもアニメやマンガ業界で活躍できる人材を育てています。
特にアニメやマンガ業界に必要不可欠な3DCGの技術習得に力を入れていて、3DCGに特化した最新のPCを揃え、人の動きを完全にキャプチャする高性能カメラなど、さまざまな最新機器も取り揃えています。これらの最新設備は授業時間以外の自主活動でも使用でき、多くの卒業生がアニメ・マンガ業界で活躍しています。
関連リンク:https://web-jam.jp/gakka/3d-anime-game/
アニメやゲームの世界では、ごく一般的に使われている3DCGの技術。なぜリアリティを表現できるのか、どんなプロセスで作っているのか、全体像が理解できたでしょう。3DCGの技術は、さまざまな業界でますます求められています。興味を持ったなら、試しに簡単なものから作ってみたり、他のユーザーが作ったものを調べてみたりして、3DCGの世界に触れてみてください。きっと多くの発見があることでしょう。